仮面のアクトレス
当然今月出た新刊は既に手に入れているのだが、まだ前の巻の感想を書いていなかったのでそれを書くまでは読む気がしない。
というわけで、とっとと書いてしまおう。
- 作者: 今野緒雪,ひびき玲音
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/06/30
- メディア: 文庫
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「妹オーディション」の辺りからこっち、「まだ引っ張るのかなぁ」というのが新刊を読むたびに出て来る第一声だったりするわけで、これもそうなってしまった。作者としても意図してここまで長引かせたわけではないのかもしれないけど、既に3学期だしなぁ。今更だが、「パラソルをさして」の中盤で攻守があっさり交代した時のどさくさで姉妹になってしまえばよかったのでは、とか乱暴なことも考える。
瞳子が自分の進路や家庭の事情で悩んでいるというここ最近の展開は、二人が姉妹になった後でも十分作れたんじゃないだろうか。祥子さまの間にも最初からまったく壁や隠し事がなかったわけではないのだから。
また、可南子は山百合会以外の人間から見た祐巳を表現するにはちょうどいいキャラだったと思うけど、瞳子と競わせたことは果たしてプラスになったのかどうか。両方ともに真から悪役でないために可南子退場にはそれ相応の理由と時間が必要になってしまったのではないかと。
それにしても、表紙見返しにあるあらすじ紹介で生徒会選挙のことについて「去年のロサ・カニーナに続いて、今年も大きなサプライズがあって…!?」とあるのはさすがに自分でもわかるほどバレバレな前振りである。山百合会以外のメンバーで出る人といえばこれはもう決まっている。でも、結局なぜ瞳子が選挙に出ることにしたかはわからなかったんだけど。祐巳と自分との差を再確認するため、というのも単純すぎるような。
他に印象に残った場面としては、なかなか表舞台に出てこない白薔薇の二人(まあ、乃梨子は瞳子との関係で結構出てくるけど)の演説前のシーン。
「お姉さま、がんばってください。応援しています。絶対、大丈夫です。私、信じていますから」
去年お姉さまからもらえなかった励ましの言葉が、一年遅れで妹からこれでもかってくらい降り注ぐ。
「それから……えっと、ファイト!」
乃梨子ちゃんは、何も知らないはずなのに。まるで、去年の分まで補うかのようだ。
突き放すような言葉をかけた先代ロサ・ギガンティアとは対照的に一生懸命言葉を連ねる乃梨子がよい。聖さまと乃梨子は違うし、祐巳が言うように「何より、志摩子さん自身が一年前とは違う」ので、それが今の志摩子さんには最大級の励ましになるわけだ。
あと、その前後にある短編二つ。