「薔薇のミルフィーユ」の感想・その3

志摩子さんの謎の笑いで面食らっていたら、紅薔薇編の予想外に重たい展開に別の意味でまた驚かされることに。妹問題はどこに行ったのか*1。さらにはレイニーブルー以来の悲劇的な引き。「パラソルをさして」以来、主人公として順調に成長してきた祐巳に久しぶりに訪れた試練かな、これは。自分は「パラソルをさして」が出た直後くらいにこのシリーズを読み始めたので、レイニーブルー後の3ヶ月をリアルタイムでは経験していないんだよなぁ。

紅薔薇編の感想を書く前に志摩子さんの笑いの意味を書こうと思ったのだが、はっきりとこれが原因といえるものは思いつかなかった。強いて言うなら、91P最初の志摩子さんの台詞、

「私ね。本当は皆さんのために、何かしたいと思っているのよ。でもなにをしたらいいのか、わからないの」

かな。そういう気持を抱えて悶々としていたところへ、祐巳

「私に何かできることある? あ、いや、言うほど大したことできないけど、もしこんな私でも何かお役にたてることがあったら」

と言われて、同じことを考えていたのは自分だけではないと気づいて安心した気持が突発的な笑いにつながったのかも。でも、これだと「ロサ・カニーナ」の祥子さまと祐巳*2と構図的には同じだったりする。

さて、本題だが、祐巳と柏木氏が会話している時の今までにない緊張感はなんなのだろうか。たとえば、「涼風さつさつ」の131P〜での会話では、少なくともここまで祐巳は敵意を見せていなかった。その感情を祐巳自身は「嫉妬」と認識しているようだけど、一般的な恋敵に向ける嫉妬とは違うようにも見える。どちらかというと年長の家族に対して持つ気持に近いのではないか。たとえるなら、少年が超えるべき相手としての父親に対して持つような。182,183Pの柏木氏の

「僕に嫉妬しているようじゃ、まだまだってこと。こんな所に留まってないで、もっと上のステージを目指せよ」

を見たからそう言うわけではないが。まあ、この台詞自体は個人的にはよくわからない所もあるし、いつからこのシリーズは成り上がり小説になったんだという気にもなるけど。(笑)

*1:今回、瞳子は名前だけしか出てこない。

*2:祥子さまは蓉子さまのためにできることがないか悩み、祐巳は祥子さまのためにできることがないか悩んでいた。