恋のドレスとつぼみの淑女/青木祐子

コバルトのサイトで「マリみて」の壁紙を落とそうとしたら横にこれがあって、まず絵に惹かれたというちょっと邪道な方向から興味を持った。去年の8月号に載っていた外伝で雰囲気を確かめた上で買ったので、大体予想通りの内容で楽しめた。
ドレスの仕立て屋の地味な女の子が主人公という設定は割と王道だろうか。お屋敷に家庭教師やメイドとして入るというスタイルの亜流とでもいうか。
単に見た目がいいドレスではなく、着る人の心を表すドレスを作るというのが多少ファンタジックなところで、その心を探ることが物語の流れの基本になるようだ。主人公のクリスも別に千里眼の持ち主ではないから、すぐに何もかもわかるというわけではないし、わかってもできることはドレスを作ることだけなわけだから。ついでにいえば、クリスが自分の心や男の気持ちがわからないというのは、占い師の制約に似ている。自らの恋にその能力を簡単には生かせないとはお気の毒だが、これも物語のお約束かな。
ドレスを作ることで人と関わっていくという特性上からか、お話はクリス自身ではなくお客の女性の身の回りで展開されることになる。とある公爵の息子の妹とその婚約者の話だけど、これはこれで妹の心の内が自分には読めなくて最後までだれずに読めた。公爵の息子シャーロックは女性の扱いに慣れた正統派の色男、妹の主治医イアンはさばけた感じの30男、婚約者アンディはちょっと気の弱い実業家と上手くキャラを配置してある。しかし、こうしてみると主人公の友人のパメラや、あるいはシャーロックの妹のフローレンスにしてもそうだけど、日本人になじみやすい名前ばかりだなぁ。