くもりガラスの向こう側

前巻でようやく祐巳瞳子に対する気持ちに気がついたのですんなり姉妹になるかと思ったらそうでもなかった。自分自身は祐巳の妹誕生の瞬間をものすごく渇望しているわけでもないんだけど、正直まだ引っ張るかなぁという気はしてしまう。ちょっと待ちくたびれたという人もいるのでは。
そもそも前回の引きからしてそのままシリアス路線で行くのかと思いきや、今回は祥子さまの家で新年会だから、いわば「『なかきよ』再び」である。1年前は聖さまリリアンらしからぬやんちゃぶりが目立っていたお正月関連だけど、今回は意外にも祥子さまが目立っている。聖さまのように大立ち回りをするわけではないが、祐巳への愛情(?)を表す場面が妙に多いのでそう見える。

  • (新年会の招待状における「『ふるって』ご参加ください」の文を)「祐巳に限っては、『絶対』に書き換えようかと、思ったのだけれど」(29P)
  • 年賀状が1年前の祐巳のものに似たカラフルでポップなものだった(50P)
  • 「(祐巳の)年賀状、元旦に届いたわよ」と祐巳にだけ聞こえる声でサラリと(70P)

という風にごくささやかなものばかりではあるけど、祥子さまにしては素直な気持ちの表し方が祐巳への信頼度を示している。前巻187Pにおける

祥子は、祐巳ちゃんに夢中だ。
祥子は、祐巳ちゃんといることによって、いい方向に変われるのだ。

という、令さまの祥子さま評を裏付けている結果ともいえるのかも。極めつけはお寿司を食べる場面で苦手のネタを祐巳に「目の前でおいしく食べてもらって」自分も食べようとするところ。清子小母さまに言わせれば「祐巳ちゃんの表情をおかずに、苦手なウニを食べるなんて!」である。ネタを交換するよりもレベルが高そうな行動。
ちなみに、清子小母さまはこの場面のナイスな台詞もさることながら、最初に祐巳たちを迎えに出てきた場面で手に持った生け花から水が垂れていることに気づかない、とか屋台セット*1を持ってきた祐巳に「覚えててくれたのね。感激!」といって抱きつくとか若々しい天然ぶりを見せており、こちらもなかなか目立っている。まあ、いささかあざとい感じもなくはないが。

*1:イカ焼き、お好み焼き、たこ焼き、焼きトウモロコシを二個づつ。52P。