「電波男」の感想

電波男

電波男

読んでいて思い出したのは、村上龍の「すべての男は消耗品である」だった。あのエッセイは、「若くてきれいな女にはかなわない」という話だったけど、それが今は「若くてきれいな男(イケメン)」になっているということか。基本的には恋愛シーンに限った話だからちょっとスケールが小さい気もするけど。
154Pの「キャバクラ=宝くじ」、「風俗=レンタル」、「恋愛=リース」、「結婚=ローン」という図式は面白い。まずお金を払うのが前提の風俗と一般的な男女関係は別物のような気もしないではないが。結局、多くのシチュエーションで男性がお金を出すことが暗黙の了解として存在し続ける限り、両者が似た構図になるのは避けられない。
しかしまあ、214Pの、

恋愛資本主義はもう終焉に近づいている。(中略)恋愛資本主義がオタクに大政奉還をしなければならないXディが、そこまで来ているのだ!
「男は女とセックスしなければならない」という過去数千年にわたる定理を、オタクは覆した。

という宣言(予言?)はすごいな。実際、おたくが一大市場を形成するようになっているのは事実だけど、天下を取るところまで行くだろうか。おたくはマイナーであるからこそおたくなのかもしれないし、「萌え」に限らず道楽とか趣味とはそうしたものだと思う。おたくは入れ込む対象が(架空の)異性であることが問題をややこしくしているわけだが。