「妹オーディション」の感想・その3(154Pまで読了)

第三章の「ようこそ茶話会へ」まで。
お節介なのは紅薔薇の伝統なのか。蓉子さまといい、祥子さまといい。そして祐巳。今回は「ウァレンティーヌスの贈り物(前編)」の23〜25Pで、カメラマンとしての矜持から妹を作らない旨の宣言*1をしていた蔦子さん相手とこれまた一筋縄ではいかない相手である。
前章の82Pで、由乃が「笙子を妹にしたら江利子さまは驚くんじゃないだろうか」とか言っていたのはフェイントだったのか、笙子と蔦子さんが再びストーリー上で二人きりになる場面がきた。普段は祐巳たちの傍観者兼アドバイザーとしての立場が多い蔦子さんが、初めて当事者になるエピソードといえる。入学してから半年も経っているのに今まで会わなかったのは、蔦子さんが「一日でも長く、隠し撮りを続けたかった*2」からとは上手い理由をつけたものである。それにしても笙子というのもわからないキャラで、写真写りが悪いことがそんなに精神的に負担になるものかなぁ、と「ショコラとポートレート」のときも思ったものだった。祐巳との会話で自分が輝けない象徴が写真であるという説明がされてはいるけど。
祐巳のお節介*3に気づいた瞬間は慌てているものの、それ以外では冷静な対応を見せているのが蔦子さんらしいところ。いつものごとく写真を発表する許可をもらう交渉もしているし。でも、記念写真のとりかた*4で駄々をこねる笙子に甘い顔をしているのは蔦子さんの生来の優しさもあるだろうけど、多少個人的な気持ちも入っているのかも。てっきり自分は、「写真を発表する代わりにロザリオを自分にください」とか笙子が言うかと思ってたんだけど、そこまでの余裕はあの場面の笙子にはなかったかな。腕をからませたりして既に姉妹のような雰囲気ではあるが。
さて、茶話会に参加した一般生徒は由乃のお眼鏡にかなわず(作中では「網にひっかかるものはほとんどなかった」という表現)ほとんど出番はなし。部外者としての立場を気にした新聞部部長真美の指示で、今までルーキーの名で呼ばれていた1年生が参加することになって「高知日出美」とフルネームまで判明したというのにずいぶんな差である。なんだか今までにない名前だけど。

*1:リリアンには素敵な生徒がたくさんいるわ。それを一人に絞るなんてできると思う? 第一、私に姉なり妹なりできてごらんなさい。彼女以外の生徒を被写体にすることに対して、支障が出てこないとも限らないじゃない」

*2:撮られていることに気づくといい写真が取れないから

*3:笙子に写真部の部室へ写真立てを取りにいく用事を頼んで強制的に蔦子さんと会うように仕向けた

*4:気づかないうちに撮ってほしいと笙子が頼んだ