「妹オーディション」の感想・その2(106Pまで読了)
第二章の「マリア様の星」まで。
よもや可南子がこの段階で表舞台から消えることになるとは思わなかった。確かに「特別でないただの一日」以降、瞳子の方が目立っていたわけだけど、「紅薔薇のつぼみの不在」(「チャオ ソレッラ!」収録)にあった、
祥子さま:「でも、あなたは祐巳の妹にはならないのでしょう?」
可南子:「ええ」
というやりとり*1は、たいてい言っていることと逆の事態になることが多いフィクションにおいては、むしろ可南子がいずれ妹になることを示す有力な手がかりにも見えたのにわからないものである。
それはそうと、出てくるとすれば今しかないだろうと思っていた内藤笙子が「祐巳さまでも由乃さまでも、どちらでもいいから妹にしてくださいませんか?」というミーハーかつ怖いもの知らずなコメントとともに登場(この段階では書類だけ)。蔦子さんがらみで来るかと思ったら、まず笙子の実姉である内藤克美さまと江利子さまの確執を巡る駒としての扱いで来たようで、どちらかといえば由乃の妹になる流れか。とはいえ、イベントには必ず顔を出す蔦子さんだから何らかの形で接触はありそうなんだけど。
前章にもあった乃梨子視点だが、志摩子さんと二人きりでないときは旧主人公の面目躍如でストレンジャーぶりを久しぶりに発揮している。オーディション改め茶話会の話を聞きに来た名前あり一般生徒の敦子さん、美幸さん相手に「ニッコリ営業スマイル」とか実にかわいげがない。(笑)
最初パラパラめくっていた時に偶然81Pの絵を見てしまって、乃梨子が泣いているからいったい何事かと思っていたら、なんと瞳子のことを思っての涙だった。
乃梨子:「祐巳さまは、瞳子じゃなくてもいいと思う」……「でも、瞳子は」
志摩子:「乃梨子は瞳子ちゃんが好きなのね?」
乃梨子:「うん。たぶん」……「私は瞳子が好きだから、きっと涙がでちゃうんだ」
「マリア様がみてる」という作品が友情物語であることのまさに典型的な一例ではあるんだけど、そこまで乃梨子が瞳子のことを気にかけていたとはちょっとびっくりである。
さらに、祥子さまが瞳子にはっぱをかけに来た場面*2でも必死に目で合図を送る*3など、祥子さまの言葉を借りるなら「瞳子ちゃんのナイト」として一生懸命に友人をフォローしている。極めつけは茶話会への応募用紙を自分が代わりに書いてポストに入れるつもりだったということ。まあ、これはなんとなく予想していたことであったんだけど、やはり、なぜそこまで乃梨子が瞳子のために、という疑問は残る。
あと、由乃が内藤克美さまのことを支倉家に聞きに行く場面で令さまが、「……由乃。雑談だったら、後でね」とどこかで聞いたような台詞を言っている。何だか今回はこういうのが多いな。