愛情表現/鬼ノ仁

鬼ノ仁短篇集愛情表現 (ジェッツコミックス)

鬼ノ仁短篇集愛情表現 (ジェッツコミックス)

帯に大きく「一般解禁!!」の文字。言葉の使い方としては間違っているような気もする*1のだが、何となく言いたいことはわかる。元々エロの世界ではかなり名を成しているし、最近では珍しくないが、確か定価2千円以上した「鬼ノ箱」(リンク先は18禁なので注意)みたいな限定豪華版コミックはこの人が走りじゃないだろうか。
そういう風に、マニア内での知名度が高い作家(帯の文句を借りるなら「美少女コミック界の頂点」)が待望のデビューというわけで、日本球界の大物がMLBに行くがごとくである。しかもこの作者の場合、絵にしろ話にしろ異様にリビドーが高い雰囲気だから、それを一般の世界でも見せられるのかどうかという。
それで結局どうだったかというとエロシーンの濃いノリ自体は成年コミックの時と変わっていない。正直なところこれが一般でいいのかと思うくらいで、大判コミックスだから雰囲気的にもそっちじゃないかと思ったり。まあ、主役のカップルがキスまでしかしない(しかも不自然でない展開で)話も二編ほどあるけど。
お話的にはすべての作品がハッピーエンドで終わっており、エロ漫画では結構欝になるような話も多かった印象があるからこれはちょっと意外だった。厳密に言えば、「特急、深夜」は解釈次第でいわゆる夢落ち的なものになっている気もするから完全に全部とはいかないかもしれないけど、タイトルの「愛情表現」はこれだけラブ度が高いからこそかな。
個人的には、「ほしにねがいを」が超ベタなラブコメ展開ながら随所に小技を効かせていて*2よかった。天然かつ一途なヒロインはこの作者の描く女の子の透明感のある表情が最も生かされていると思う。

*1:普通は「一般→エロ」に使うべきだろう。

*2:ヒロインの燕は憧れの先生と二人きりになる直前に「下着よし! ハミガキよし! 枝毛チェックよし! メイクよし!……感度よし!」と乙女心を爆発させている。