コミック百合姫Vol.4

相変わらず値段が高いが今号は60Pほどページ数が増えて320Pある。これで月刊、は無理としても隔月刊くらいならいいのだが。読んだものだけ感想を書く。

ときめき☆もののけ女学園(南国ばなな)

「百合」というより「エロ漫画」? 絵的には少女漫画系ながら程よくリアルで肉付きのいい身体の線を描いていて好みだけど、何かもうどう見ても肉欲優先な雰囲気(といってもせいぜい足を舐められるくらいだが)はこの雑誌の巻頭カラーとしてはどうなんだろうか。

みちくさ(タカハシマコ

この人の漫画にはたいてい心の痛みがつきまとうのだがこれもその例に漏れず。外側から見れば友達以上百合未満とでもいうちょっといい関係も、内心をのぞけば二人とも本当に好き(大事)なのは自分自身だったりして幸せな空気はまるでない。結果の良し悪しはともかく最後にお互いの心情を吐露しあって不安定な関係に終止符を打つという展開にもならないから、読む側にとってはカカオ純度の高いチョコレートのように苦味だけが残る。

ご主人様と一緒(日輪早夜)

一言で言うとあざとい作品。無垢で従順な人型ペットがご主人様の心をつかむまで、の話だが、こういうキャラは普通に書けばかわいく見えるものだし、一見冷たそうなご主人も実は寂しさを抱えているとなれば結果は見えている。でも、最後のキスの場面はされた方も不意打ちだろうけど、読んでいる方としても予想していなかったからちょっと不意を突かれた。

百合の花粉は落ちにくい 四輪目『降っても晴れても』(三浦しをん

副題にある藤村真理の漫画と榛野なな恵の『ピエタ』を題材に女性同士の同居生活について書いている。筆者自身に同居生活のパートナー候補がいるせいかもしれないが、なかなか興味深い分析で作品も読んでみたくなる。
前者については、

「恋人のような友人のような、気の合う仲のいい同性同士で、共同生活を営む」という夢のような人間関係を、現実のものにできたら、こんなに楽しくて幸せで、ちょっと切ないことはないだろう。
この「夢のような人間関係」のモデルケースが漫画の世界にすでにあった。

で、後者については、

こちらの二人の女の子の関係は、もはや友情とか恋愛というものを超越している。二人の魂の交感ぶりは、他者にはうかがい知れないほど崇高で、独自の波長の上に成り立っているものとして描かれる。二人の繊細な感受性を指して、カウンセラーのおっさんが「ささやかな進化の階段を一つ上ってしまったんじゃないか」というぐらいだ。

と書いている。なんだか凄そうである。まあ、後者は「Papa told me」の作者だし、浮世離れしていても不思議ではないけど。

彼女になりたい!(CHI-RAN

エロ漫画その2? 読みきりでページ数が少ないので仕方ないけど、ちょっとキャラが理想的過ぎる感じで深みに欠ける。同居していればいい面以外も見えてくるはずなのだが。

初恋姉妹 第6話「嵐の予感」(東雲水生

タイトルからしてベタだが、新任教師が男性のようなかっこよさを持つ素敵な人で榛菜と千夏の間に割って入りそうな気配を漂わせている、というのもずいぶんとあからさまな波風の立て方である。本質的には悪い人間でもなさそうな気もするが、無理やり揉めさせるのは好きじゃないんだよなぁ。

月に願いを(森永みるく

瞳「もう私バスケ部やめて他の部に入ろうかな――」
奈々「え? なんか入りたいのがあるの?」
瞳「うん 奈々部♥

みたいに思い切りラブラブな台詞があるかと思えば

朝のバス停… 月夜のデート… あと何回繰り返したらこの胸のときめきはおさまるんだろう

のように恋愛中のもどかしい内面を表す描写があったりして純愛ドラマとして隙のない作り。ほとんど幸せな空気で進むが、望まない未来を瞳が夢に見るという場面で危機感を煽っている。

シムーン 第2話 遠い約束(速瀬羽柴

もしかしてアニメ版より出来がいい? 前回、今回と明確な嫌われ役「マミーナ」が存在することで話がわかりやすいし、その嫌われ役もあくまでこの2話限定で最終的には一応の和解を見せるので後味がいい。というか、アニメだと主人公のアーエルが憎まれ役だったりするわけだが。
マミーナのパルであるロードレアモンも、アニメ版だと単なる天然ボケ風味のキャラだけど、こちらだとお嬢様でありながら気が弱いという設定が生かされているし、最後の和解の段階では多少精神的に成長したところも見せている。
(追記:何か忘れていると思ったら……)

SongSong浪漫(むっちりむうにい

相変わらず、クールだが強引な東城さんに振り回される海(主人公)。相手が女の子だからというより、単に恋愛下手なために対処の仕方がわからないという風にも見えるのだが、いずれにしても見事な踊らされっぷりである。早く素直になってしまえば楽になれるのだろうけど、それができていれば苦労はしない。