第20話「忘れられぬ罪」

楓「償いたかったのに。ずっと、ずっと、稟君のために尽くしたかったのに……」
プリムラ「本当? 本当に、稟のため?」
楓「ううん。嘘。本当は私が側にいたいの」

いつ楓が爆発するかヒヤヒヤしながら見ていたのだが、前回のような切れ方はせず。前回が修羅場なら、今回は愁嘆場か。裸で稟のベッドに潜り込むという行動には出ているけど、虚ろな目をしてシャワーを浴びている時点で何となく予想はつくのでそれほど驚きはしなかった。その後も泣きながらではあるが、「あんなにひどいことしたんだから仕方ないよね」などと自己反省の言葉を口にしたりして、意外に物分りがいい。ちょっとがっかりしたような、ホッとしたような。
ただ、上の台詞でプリムラが楓の本音を引き出したところまではよかったのだけど、すぐ後の「(そのことを)稟に伝えた?」に対する楓の返事は「私には愛される資格がない」という後ろ向きなもので思い切るまでには至らなかった。結局、それが建前と気づいても自分の家政婦的ポジションにこだわるのは、本当の気持ちを伝えて稟に拒否されるのが怖いということなんだろうな。
一方の稟君は楓の世話焼きの申し出をことごとく断るわ、目の下に隈が浮いている顔にも気づかないわで鈍感さもちょっとここまで来ると罪なのだが、裸で抱きつかれてようやく少しは自分の優柔不断さに気づいた模様。でも、その結果として出した答えが「この家を出て行く」であるというのは理屈としては正しいんだけど、それをこのタイミングで言うとまずい気もするんだよなぁ。
それにしても、亜沙先輩とのやり取りは演出としてわざとやっているのかもしれないけど、ひたすらに甘い。稟が手を握ったまま寝ていたのを起こした後の、

亜沙「(ずっと)このままこうしててくれる?」
稟「ずっと入院されてちゃ困ります」
亜沙「こういうときは、嘘でもいいから『うん』って言うの!
   乙女心がわからないかなあ」
稟「男心は照れくさいんですよ。嘘でも『NO』って言うんです」

などは、先輩のベタな台詞に対して稟がずいぶん気の効いた台詞を返していてびっくりだし、母親の亜麻を交えた退院前日のシーンではこれ以上ないくらい平和で楽しげなBGMがかかっている。エピローグならそれでもいいのだが、まだ終盤手前の段階での幸せ過ぎる空気は逆に崩壊の予兆かもしれないのでどうにも安心できない。