最後の制服/袴田めら

最後の制服 1 (1)

最後の制服 1 (1)

百合であるというのが理由で興味を持ったり買ったりするようになったのはいつからだろう。まあ、マリみてやらヤミ帽(アニメ版)やらがきっかけにはなっているんだろうけど。
芳文社だから四コマかと思ってたら、普通のコマ割りの漫画だった。絵的にはかなりシンプルなのでそれっぽいが。
直接的な表現はキス程度だけど、女の子が女の子を好きになるというのを極めて自然に描いているのがいい。どちらかが男でも違和感がないくらい好きという気持ちに迷いがない。冷たくされるとすねたり、ちょっとした一言に喜びを感じたり、それはもう乙女心というしかないのだが、その気持ちが向かう相手が同性であるというだけである。マリみての姉妹のような崇拝と依存の関係ではない分、普通の恋愛ものに近いかな。ただ、そういった公認の制度がないせいかどうなのか、両思いのカップルがいないのは寂しいが。とにかく出てくるキャラが皆、誰かに片思いなのである。
そんな中で、メインカップル(?)の紡と紅子は、紡が不器用に紅子のことを思う一方で紅子も思わせぶりな言動をいくつか見せていてスリリングである。王様ゲームの命令とはいえ、周りが息を呑むような雰囲気でキスを迫ってみたり*1、官能小説のモデルにされたことを「相手が紡ならいいかな」と言ってみたり。なんとなく、相手の気持ちに気づいていてわざとやっている風にも見えるけど、だとしたら罪な女だ。
「好きな人っていないんですか?」と聞かれて「いるよ」と答えているのも気になるところ。聞いたのは紡でない(その気があっても聞ける性格ではないだろうが)別の生徒で、「好きな(男の)人は?」という意図だとは思うけど、紅子がその通りに答えたとは限らない。
とはいうものの、作中ではもっとも自覚的に同性を好きでいる如月先輩が、

ベニー*2だって これからその好きなに 気持ちを打ち明けることもあるだろう
その男と 両思いになって 胸ときめかせることもあるだろう

と不吉なことを言っているから、やっぱりかなわない思いなのか。まあ、その後で、

それでも 「友人」として一生 側にいれればいいんだ
どちらかの 息の根が止まるまで

と言うあたりが自覚的な者としての強みなのかもしれない。そして、もし紡が同じくらい自覚的に紅子を思う少女だったとしたら、「なぜ、自分のものにしようとしないんだ」くらいのことは言うかもしれないとも思った。

*1:ちょうどその直後に起きた停電後の暗闇で、不意打ちという形で唇を奪う。

*2:紅子のこと。