大きな扉 小さな鍵
マリア様がみてる 25 大きな扉 小さな鍵 (コバルト文庫)
- 作者: 今野緒雪,ひびき玲音
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/10/03
- メディア: 文庫
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月並みな感想だけど、いい物語というのは出てくるキャラがどれもよく見える。いわゆるキャラ萌え的な場面がなくてもそれぞれの役割がしっかりできていることで存在感を示してくれている感じがある。今回それが一番わかりやすい形で出ていたのが、バレンタインデーの企画を真美さんが持ち込んできて由乃さんが一人反対するが結局折れる、という一連の流れだろうか(53ページ〜73ページ)。一人で空回りする由乃、天然ボケながら正論を言う祐巳、上級生にもしっかり反論する乃梨子、と各キャラの持ち味が的確に発揮されていて嫌味がない。最後の締めのところでは新聞部の真美が由乃に折れるきっかけを与えるために大げさなポーズで頭を下げるというパフォーマンスを見せていて、「祐巳さんでも志摩子さんでも乃梨子ちゃんでもない。真美さんだからこそ、効く狂言」と由乃は評している。
あとはまあ、瞳子と祐巳の関係に話がしぼられていることも大きいだろうけど。やはり、ある程度姉妹関係で話が動く展開にならないとキャラも動かないのかな。作者自らあとがきで「今回、(キャラが)勝手に動いた」と書いている。そのキャラは乃梨子のことらしいが、最後の場面のことかなぁ。あそこはてっきり祐巳が戻ってくるものだと自分は思っていたのだが。
しかし、次巻以降を読んでいないのでどういう流れになっているのかわからないけど、26ページの乃梨子の内心の描写にある
とか、38ページの祥子さまの
とか、ほとんどこの二人のことを確定事項のように書いているような。
上でキャラ萌え的な場面がなくても、と書いたがバレンタインのカードをどちらが隠すかでちょっともめた後の志摩子さんと乃梨子はどう見てもそういう場面ではある。普段わがままを言わない人がなぜ、という答えが「乃梨子の隠したカードを探したかったから」だものな。まあ、二人の世界に持ち込むのは白薔薇の伝統みたいなものかも。